大手英会話スクール講師、学習塾、プライベートレッスン、公立小学校の英語学習プログラムなど幅広い場所で講師18年のひろの先生に、「簡単なことも直ぐに言葉にできません」という英会話初級者の方へのアドバイスを伺いました。
早速ですが、「簡単なことも直ぐに言葉にできません」と思われている生徒さんに、ひろの先生の思うアドバイスをお聞かせください。
はい、入門の方、初級者の方、英語をはじめたばかりですね。外国の方に道を聞かれ、道案内を習ったはずなのに出てこなかった、言葉にならなかった。また、英語のレッスンを受けたけれど次のレッスンでもすぐ喋れなかったなどのシチュエーションが多いかと思います。
この悩みを持つことが「いい刺激を受けられていますね!」と言いたいです。なぜかというと、それは英会話をした証拠です。レッスン受けた、外国の方とのコミュニケーションをした証拠なので、その時感じた刺激(気持ち)を大切にして、さらに利用して欲しいです。
「この単語を覚えてきなさい」と指示され受け身でやるものと、「これは英語で何と言うんだろう」と自発的にやるものでは記憶に残る量が違います。「あのとき道に迷っていた人にうまく伝えられたら、もっと早く目的地に着いたのに」、そういう感情と一緒に覚えたことはしっかり頭のなかに入ります。
すぐに言葉に出てこない、その経験こそが良い刺激となって、よい英語学習としてつながって行くんですね。
はい、「簡単なことが言えなかった」と思ったその後が大事です。できるかぎり、すぐに解決してください。
「後で調べよう、今度調べよう」と先延ばしにすると、その経験も動機も薄れていってしまいます。すぐ解決できない時はメモして、後からオンラインの先生に聞くでも良いですし、自分で調べてみるのもいいでしょう。よくある3つのタイプの「簡単なことが言えなかった」についてそれぞれお話していきます。
①覚えていたはずの返事の仕方、決まり文句が言えなかった
②日本語が頭に浮かんで、英語にできなかった
③使う英単語はわかったけれど、英文が組み立てられなかった
①覚えていたはずの返事の仕方、決まり文句が言えなかった
挨拶でHow are you?って、ありますね。なんと返事していますか? I’m fine. が多いかと思いますが、それ以外でどうでしょう。
I’m fine. Thank youと反射的に答えてしまっていますが、ネイティブの方たちは GoodやOkay. となどと簡素に答えていることも多く、よく耳にします。
そうですね、Good./ Not good./Okay. /Pretty good.など答え方はたくさんあります。覚えていた、習っていたI’m fine. Thank you. の決まり文句を、ネイティブの人たちが使っている自然な Good/ Not good/Okay. Pretty good.に変えて、いつもと違う返事の仕方にチャレンジしてみてください。
では、どうすれば次にHow are you?と訊かれた時にPretty good.などと言えるか。それは声を出して覚え、声を出して言う練習をするんです。ポイントは声を出すこと。
日常生活でオンラインレッスンを利用していても、それ以外の時間に英語を話す時間はごくわずかだと思います。ですので、何か新しい表現に出会ったときは、ひとりごとでぶつぶつ、声に出して練習してみてください。
英会話を習いはじめたばかりの頃って、頭で覚えただけでは口からスムーズには出てこないのです。普段は日本語を話しているわけですから。お口の体操と思ってやってみましょう。
私もレッスン準備でひとりごとを言いながらレッスンプランを書いています。新しい単語や表現を覚える時にも必ず声を出して覚えます。年齢とともに記憶力も曖昧になっていきますし…。繰り返すこともとても大事です。何度も口に出して練習しましょう。そして、チャンスが来たら使ってみましょう。
次に、
②日本語が頭に浮かんで、英語にできなかった
誰しも、日本で暮らし、家族も職場も日本人だと日本語で生活しますし、日本語が先にでてくることが当たり前ですよね。What did you do yesterday?と聞かれて、
「えっと、駅前にお寿司屋さんができて、オープンしたので友達とランチしたんですよ」という具合に頭のなかに日本語で答えが出てきます。ここで、この文を英語にするとものすごく長く、そして関係代名詞を使った難しい文章になります。
こんなときは「駅前にお寿司屋さんができて、オープンしたので友達とランチした」を分解して、
1. 駅前にお寿司屋さんがオープンした。
2. そこに友達と行った。
3. そこでランチした。
このように長い文章を3つにわけます。
これなら、英語に変えられますか?いっぺんに長い文章を言おうとせずに短く分解することがポイントです。頭に浮かんだ日本語を『自分が英語に訳せる日本語に言い換える』トレーニングをしていきましょう。
最終的には、より伝わりやすい英語表現にする、英文を英語で考えることがゴールですが、入門初心者の方はこのプロセスをやってみてください。
好き嫌いはありますか?と聞かれ、「好き嫌いはありません。」と答えたいとします。「好き嫌いって英語で何だろう」、その日本語の訳にあった英語を探そうとしてしまいます。好き like, 嫌いはdon’t like. 食べ物はfood。
ここで英語をさがすのではなく、「好き嫌いはありません。」のほかの言い方、好きなものも嫌いなものもないということから「何でも食べられる」I eat anything. と簡単に答える方法が思いつくかもしれません。
日本語をそのまま英文化するのではなく、意図を自分の分かる英語で作れるようにしましょう。
以前、外国人の友達に、街で見かけた就活生のことを聞かれました。黒いスーツに黒いカバン、全身似たようないでたちで、「彼らは何をしているの?」と聞かれたのです。「就活生だよ」と答えたい、でもこれも好き嫌いと同じで、就活生という英単語にこだわらず、仕事を探しているわけですから、そのままThey are looking for jobs.で、意図は伝わります。
普通の大人の会話、一般的な日本語の会話表現を、そのまま英語に訳そうとこだわってしまうのではなく、日本語自体をもっと簡単にして、お子さんに説明するような気持ちでやってみると良いですね。
頭に浮かんだ長い分は、簡単な短い文章に分解する。そして日本語訳にこだわらず自分でもわかる簡単な英語におきかえて、シンプルにして行くことが大事ですね。
3つめのお話になりますが、
③使う英単語はわかったけど、英文が組み立てられなかった。
単語はわかるのだけど、文章として出てこない。これは、SV(主語と動詞)の語順が関係しています。
英語と日本語の大きな違いは語順です。
日本語は、「お寿司屋さんへ行きます。」と言えば、”誰が・誰は”がなくても通じてしまいます。英語の場合は「私は / 行きます/ お寿司屋さんへ」となるんですよね。I go to a Sushi restaurant. 必ずS(主語)の次にV(動詞)が来ています。まずはこれに慣れましょう。
そして、この文の場合、動詞の次に来ているのは前置詞(to)と名詞( a Sushi restaurant)です。
動詞の次には目的語[何を]が来る場合もあります。慣れるまでは単語を1つずつ付け足して文を作っていくのは大変ですよね。
動詞に続く[どこへ]や[何を]の部分の組み合わせに慣れておくと、それで短い英語表現は完結しますから、とても楽になっていきます。
動詞と、それに続く単語をセットで覚えていくことをお勧めします。
go to a Sushi restaurant.
go and have lunch.
go with a friend.
このよう動詞のgoで考えられるシチュエーションをセットにして覚えて練習しておくことで、とっさの返答に言葉が出やすくなります。
watch TV
watch a movie
watch a boy
play baseball
play video games
play the piano
turn on the radio
turn on the air conditioner
turn on the light
go=行く、watch=見る、play=する、遊ぶ、 turn on=点ける、このように 単語だけで覚えるのではなく、他の単語とセットで覚えておくと、あとは”誰が・誰は”の主語をつけくわえるだけで英文ができます。(過去・未来の時制、三単現Sは入門の方はまだおいておきましょう)。
これらの動詞と後に続く単語をセットにして、よく会話で使う「〜してみてはどう? Why don’t you? 」を繋げてみます。
Why don’t you + watch TV
Why don’t you watch TV? (テレビをみたらどう?)
と2つをくっつけただけで、少し長い文章になって完成します。
お家を建てている風景を想像してみてください。現場で大工さんが木を切ったり、とんかちで柱をトントンしながら作り上げる伝統的な建築方法がある一方、工務店や工場で家の壁や屋根などをある程度つくりあげて、それを運び、建築現場でガンガンと組み立てていく建築方法ってありますね。驚くスピードで家ができあがります。『組み立て工法』または『プレハブ工法』というらしいのですが、まさにこれです。そのイメージで途中まで造りあげて(決まり文句をセットで覚える)、あとは現場でくっつけて家にする(それらを並べ替えて)=話すこと、に繋がって行きます。
最後にこれは勉強法なのですが、英単語の家庭学習として、英英辞典をおすすめしています。Oxford Learner’s DictionaryやCambridge English Dictionaryなどのインターネットで英単語が調べられる辞書です。
https://www.oxfordlearnersdictionaries.com/
英単語が英語で説明されていて、簡単なもの、例えばappleなど、色や形が平易に想像できるものを調べてみると面白いですよ。
Apple is a round fruit with shiny red or green skin that is fairly hard and white inside. (リンゴは丸い果実で、光沢のある赤や緑の皮があり、中はかなり硬くて白いです)
辞書って、知らないことを調べる用途と想いがちですが、知っている単語がどのように説明されているか?知っている単語だけに、説明文も理解しやすいです。
そんなところから単語を初めてみるのも楽しめるかもしれません。
実際の会話で、伝えたいけど、その単語が出てこない場合、まさに、英英辞書のように、知っている語彙で説明しますよね。この[言い換え力]が高い人ほど、コミュニケーション力が高いとも言えます。
語彙力が多いわけではないのに、どんどん話せちゃっている人って、このスキルを駆使されています。
前述の3つの例を参考に英語の基本の型を身につけて、同時に、(知らない)語彙であっても、自分の知っている英語で説明(あるいは、相手から聞き出すことが)できるようになってくると、
格段に英語コミュニケーションがスムーズにできるようになってきます。
簡単なことから、簡単な表現で。この基礎の部分がとても大事、急ぎすぎず、愉しく学んでまいりましょう。
■事務局よりコメント
すぐ言葉にできない経験を良い刺激を受けていますねと優しく包むようにおっしゃっていたひろの先生。失敗を失敗だけに終わらせず拾い上げてくれるような指導力の高さに繋がっているのだなと印象を受けました。すぐ言葉にできないもどかしさを楽しい英語学習に切り替えられるよう、ひろの先生のレッスンを参考にしてみてはいかがでしょうか。
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